根府川海岸で写生をしていたら 散歩の人が立ち止まり

話しかけてきた「ここはよく描きにくる人がいるのですよ

でもヤクザな絵描きが多くてね あなたのは良い」と言われた

「ロッククライミングができるような山になっているね」

「それは僕の願望です」と言った

   

この頃垂直思考 上昇志向が強く 身の回りにそれ

を満たすモチーフがなく 抽象でデッサンをやっていた

直線が組み合って三角形を成し鋭角になりながら上昇していく

というムーヴマンだ

    

その方は近くに住んでいる絵描さんだった

誘われるままに家にお邪魔し 楚々とした奥様?にお茶をごちそうになった

その方の絵も見せていただいた 正直その時僕はその絵をよく解らなかった

それからずっとご無沙汰してしまったが後に展覧会で見て感動した

師のない また発表もしていない私だったがこの時誉められたことはことは嬉しかった

    

      

夏 友人の画家と民宿に泊まって写生をした

画材を担いで一山超えて海辺に出る 今は道路が整備されてしまったようだが

この構築的な構図が気に入った うまくとり入れられたように思う

手前は大きな丸い石がゴロゴロ重なっていて処理に困った

炎天下 海水パンツを履いていて 頭がボーっとしてくると海に飛び込み

少し泳いでからまた描いた

    

       

これは写生的なものではなく 形而上学的な海だ

水平線一本で分けられただけのひどく単純な構図

動きは極力抑えられ 雲もなく 極く僅かな波

空の上の方は不自然なくらいに濃く

水平線(僅か右が下がっている)は強められている

遥かな 限りないものへの憧れ 静かさへの想い